たこやき

観劇記録

ジエン社『いつまでも私たちきっと違う風にきっと思われていることについて』

【作・演出】
山本健介
【日程】
2016/07/20 (水) ~ 2016/07/25 (月)
【会場】
3331 Arts Chiyoda
【出演】
伊神忠聡、児玉磨利、佐竹奈々、高橋ルネ、松本芽生、本山歩

 いつだって可笑しいほど誰もが誰か愛し愛されて第三高等学校の二階校舎の教室の窓際から、机四つ分離れた廊下側に、茉莉の席はあった。茉莉は授業中、机につっぷして寝ることが多くなった。
 次の休み時間、誰に話しかけたらいいか。
 瑠璃色のことを、ちょっと違うんじゃないかと思ってスルーして以来ケンカのような感じになってしまって、もうそれだけで、教室がまるで口をぱくぱくした金魚のような空気の薄さだ。
将門君が今日から五日間学校にいない。キンシンなんだそうだ。なんでもこの間真夜中の学校に忍び込んだのがバレたらしい。小学生かよ。どうやらいつもいる楽と朝ちゃんとと一緒に忍び込んだのに、ちゃらちゃら明るい将門君だけ目をつけられてキンシンになったというウワサ。あの幼馴染の三人はいつも一緒にいて何やってるんだろう。
 それを、カーテンにまみれて遠くで見ていた私は、それだけでいいなあとか思っていて。見れば見るほど、将門君と朝ちゃんは皆とは違う風だと思った。べっかくだ。だから楽と朝ちゃんが付き合うんじゃなくて、将門君と朝ちゃんが付き合えばいい。楽に朝ちゃんは似合わない。単に幼なじみ、っていう言い訳で、彼氏彼女とかになんないでいてほしい。楽は自分の話しかしない。楽は自分の好きな映画の話とか、漫画の話とか、しかもそれ、他の人が知ってるような漫画や映画じゃないから、話しても全然つまらない。何回話しかけても、楽は自分まみれ。楽なんて全然興味ない。

その時。タッタッタッと、廊下を走る音。そして違う風。

 私たちとはまるで世界観の違う人が、私に、茉莉に、「いつ高」の生徒に、話しかけてくる。

 いったい、どう話しかけてくるんだろう。

 ファンタジーでなければならない。
 違う風に思われている私たちが、知らない誰かに関わるとき。
 ファンタジーを、信じなければならない。